起業した個人事業主や中小企業の経営者が、まず初めにやることは「法人クレジットカード審査の申し込み」と答える人も少なくありません。
通常の個人向けクレジットカードでは、接待交際費、出張旅費、消耗品費など、経費の支払いに使うことは基本的にはできません(*1)が、法人クレジットカードなら、それら経費の支払いに利用することができます。
また、特に個人事業主や中小企業の経営者なら、支払い先をクレジットカード会社に一本化することで、経理処理にかかる事務作業を大幅にカットできることも大きなメリットです。
ここでは、そんな大きなメリットが得られる法人クレジットカードの審査基準や、審査に落ちてしまった場合に考えられる原因、そして審査を少しでも通しやすくする方法をご紹介します。
これから申し込むけど「法人クレジットカードの審査基準って?」という方や、「申し込んだけど審査に落とされてしまった!」という方はぜひ読み進めて法人クレジットカード審査をパスしましょう!
法人クレジットカードの3つのメリット
法人クレジットカードには、経費の支払いを1本化することで、無駄な手間や手数料、事務コストを削減でき、経費の透明性も保つことが可能です。その他、各クレジットカード会社が提供する様々な特典や付帯サービスも魅力のひとつです。
法人クレジットカードのメリットについては冒頭でも少し触れましたが、他にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
法人クレジットカードなら、現金での支払いよりもスピーディに支払いができ、「いつ、どこで、いくら使った」などが簡単に管理できます。
あなたが従業員を抱えている場合は、法人クレジットカードを持たせ、一定の裁量を与えることで、多くの無駄な手間と時間をカットでき、経費の透明性が保たれ従業員の不正防止にも繋がります。
また、最大のメリットは支払い先をクレジットカード会社に1本化することで、振り込み手数料や事務コストが大幅に削減できる点でしょう。
そのほか、ポイントが貯まるものや、購入したものに保険が適用できる、空港ラウンジを利用することができるなど、様々な特典やサービスを各クレジットカード会社が用意しています。
個人向けクレジットカードよりも年会費が高めだったりと多少のデメリットもありますが、それを超えるメリットが法人クレジットカードにはあります。
法人クレジットカードの3つのメリット
- 経費の支払いを1つにまとめられて管理が楽になる(経費の透明性)
- ムダな管理コストや事務コストを減らせる
- 各クレジットカード会社のお得なポイント特典などを利用可能
法人クレジットカードの審査基準
法人クレジットカードの審査基準としてよく挙げられのが「会社設立後、3年以上の黒字経営」というものですが、実際には起業間もない会社や個人事業主でも法人クレジットカード審査に通過しています。もちろん黒字経営も大事ですが、契約する経営者の個人信用情報も重要な審査基準となります。
ここでは、法人クレジットカードの審査にはどのような基準があるのかをみていきます。
法人向けに限らず、一般的な個人向けを含むクレジットカードの審査基準は、各クレジットカード会社により異なり「独自の審査基準」があります。
また、詳細は機密事項として扱われるため、クレジットカード会社の社員でも明確な基準を知る人は少ないそうです。
ですが、一般的な目安としては以下のような審査基準の目安があります。
法人クレジットカードの審査基準
- 会社設立から3年以上が経過し、黒字経営がなされてる
- 契約する経営者個人の信用情報のクレジットヒストリー
もちろん審査基準はこれだけではありませんが、重要な項目であることは間違いありません。
では詳しく解説していきます。
会社設立から3年以上が経過し、黒字経営がなされてる
一般的には「会社設立後、3年以上の黒字経営」が基本などと言われていますが、実際には設立年数が浅い場合でも、法人クレジットカードの審査を通ったという話は私の周りでもわりと聞くのでケースバイケースといったところでしょう。
逆の立場で考えると分かりますが、あなたがお金を貸す立場なら、黒字経営で実績のある経営者と、赤字経営でなくとも実績のない経営者のどちらかを選ぶとしたら、答えは前者のはずです。
とはいえ、クレジットカード会社も審査を厳しくしすぎても、新規顧客を増やせないわけなので、現実的に考えても「会社設立後、3年以上の黒字経営」というのは基準というよりも、「できれば」といった目安ではないでしょうか。
次に説明する、経営者個人の信用情報が特に問題なければ、設立年数が浅くても法人クレジットカード審査に申し込んでみる価値はあります。
契約する経営者個人の信用情報のクレジットヒストリー
上でご説明したような「会社設立から3年以上の黒字経営」をしていたとしても、仮に法人クレジットカードを契約する経営者個人の信用情報に異動情報(事故情報)が登録されていたら、審査に落ちる可能性は高いでしょう。
過去に個人向けクレジットカードの支払いを延滞していたり、携帯料金の滞納(*2)がある場合は注意が必要です。
法人クレジットカード審査に落ちた時に考えられる4つの原因は?
ここでは法人クレジットカード審査に落ちた原因として「赤字決算になっている」「代表者の個人信用情報に問題があった」「書類に不備(不足)があった」「申込んだカードの基準がそもそも対象外だった」などを解説します。審査に落ちた原因を理解し改善することで、次回以降の審査に通りやすくしましょう。
法人クレジットカード審査に申し込んだけど、審査落ちしてしまうこともあります。
申し込みにお金が掛かる訳ではないので何度でも申し込みは出来るかもしれませんが、審査に落ちてしまう原因が分からなければ、無駄な時間を費やすだけになってしまいます。
下記にある項目に心当たりがある方は、ぜひ原因を改善して審査に通りやすくしましょう。
法人クレジットカード審査に落ちた原因リスト
- 赤字決算になっている
- 代表者の個人信用情報に問題があった
- 書類に不備(不足)があった
- 申込んだカードの基準がそもそも対象外だった
赤字決算になっている
赤字決算といっても、以下の2パターンがあります。
赤字決算のパターン
- 本当に経営が上手くいっていない赤字決算
- 節税のための意図的な赤字決算
基本的に法人クレジットカードの審査では黒字経営の会社のほうが審査に通りやすいのは間違いありません。
ですが節税対策のために、経営は順調だけど意図的に赤字にしている個人事業主や経営者も少なからず存在しますし、クレジットカード会社側からみても「毎月コンスタントに使い、きっちりと返済をする」ような経営者は優良だといえます。
赤字決算でも、経営状態が良いのか悪いのかは決算書に記載されるPL(損益計算書)やBS(貸借対照表、バランスシート)で簡単に分かるので、仮にあなたが意図的な赤字決算にしていて審査に通らなかったなら、他に原因があるはずです。
また、会社設立から間もない場合で、赤字決算だとしても、審査に通ることもあるので、比較的審査が通りやすいクレジットカード会社を狙って審査にだしてみることも重要です。
代表者の個人信用情報に問題があった
経営に問題がなくても、法人クレジットカードの契約者の個人信用情報に事故情報が登録されている場合は、審査を通すことは厳しいと言わざるを得ません。
これは先の『契約する経営者個人の信用情報のクレジットヒストリー』でも少し触れましたが、過去にクレジットカードの支払いを未払いや滞納していると、信用情報機関が管理する個人信用情報に、事故情報が登録されてしまっている可能性があります。
また、上で触れた携帯端末料金の分割払い(割賦購入)の滞納以外にも、「奨学金」の支払いが3ヶ月なければ信用情報に事故情報が登録されるケースもあるので、奨学金制度を利用したことがある方は注意が必要です。
書類に不備(不足)があった
これは意外と審査落ちする原因としては多かったりします。
もし申込書に手書きで記入するなら、記入箇所を間違えてしまったり、文字が雑であったりするなども審査に落ちる原因となり得ます。
書いてある文字が読めないと、審査するほうとしても対処できませんから、審査に落とすしかありません。
インターネット上で申込みフォームから申し込む場合でも、やはり記入欄を間違えたり、記入内容を間違えてしまわないように気をつけるべきです。
また、任意箇所だからといって、空白で出すのはマイナスです。
項目によっては書きづらい所もあるかと思いますが、しっかりと埋めて空白が無いようにしましょう。
申込んだカードの基準がそもそも対象外だった
法人クレジットカードに限りませんが、カードの種類によっては申込みに一定の基準を設け、対象者を制限している場合があります。
例えば年齢制限や、年収がいくら以上、勤続年数が10年以上や持ち家か?などです。
該当しなければ当然、審査に落とされてしまいます。
きちんと申込みの基準を満たしているかを確認してから申請しましょう。
スポンサーリンク審査を通過すために出来る3つの対策
法人クレジットカードの審査を通過するには「固定電話の設置」「自社ホームページを作成」「審査基準が比較的甘いカードを選ぶ」などの対策があります。どれも個人の「信用度」を上げ審査に通りやすくするために必要な対策なので、是非対応できるものは実践しましょう。
ここでは、法人クレジットカードの審査を通過するためにやるべきこと、やっておくべき対策をご紹介します。
審査を通過すために出来る3つの対策
- 固定電話を設置する
- 自社のホームページをもつ
- 審査基準が甘いとされるカードを選ぶ
ぜひ実践して審査をパスする可能性を高めていきましょう!
固定電話を設置する
現在では、携帯電話が普及し固定電話の番号がなくても様々な契約などの時でも大体が事足りてしまいます。
ですが、やはりビジネスとなると代表番号が携帯電話と固定電話とではやはり「信用度」が違ってきます。
同様にクレジットカード会社の審査でも、この点は審査に有利に働きます。
実際に、1度目は審査に落ちてしまったけど、申込書に記入する電話番号を、携帯電話から固定電話に変えて審査に出したら通ったという話があるくらい、有効な対策です。
自社のホームページをもつ
個人事業主の方に特に有効なのが自社のホームページを持つことです。
会社勤めの人なら在籍確認で働いている(収入がある)ことが分かりますし、会社が分かればおよその年収などが分かります。
しかし個人事業主だとその辺りが分からないので、ホームページを用意し、
- 会社概要(資本金や売上)
- 仕事の実績
- 取引先
- お問い合わせフォーム
など最低限のコンテンツを用意しておきましょう。
このなかでも重要なのが「仕事の実績」や「取引先」です。
飲食店なら店舗の写真を載せたり、Webデザイナーならこれまでの成果物やクライアントさんから声をもらってみたり。
とにかく活動しているという「証拠」を示すためにも、簡単なもので構わないので、自社ホームページをつくりましょう。
審査基準が甘いとされるカードを選ぶ
これも重要な対策です。
いきなりステータスの高い法人クレジットカードに申し込んでも審査に落ちる可能性が高いでしょう。
ここでは比較的審査に通りやすい法人クレジットカードを3つご紹介しておきます。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールドカード
アメックスが発行する「アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールドカード」は、個人事業主向けに発行される法人クレジットカードで、経費の管理や削減に役立つ豊富な特典やビジネス向けサービスを備えています。
年会費が26,000円(+税)ですが、ステータス性が高く、四半期管理レポートが無料で発行できるなど経費管理に役立つサービスもあります。
外資系のクレジットカード会社は日本のクレジットカード会社と審査基準が異なるので、過去に信用情報に傷がついていても、現在の属性がよければ審査に通る可能性があります。
決して審査が甘い訳ではありませんが、設立から間もなく、赤字決算だけど審査に通ったという話は私の周りにもあるので、他の法人クレジットカードで審査に落ちてしまった方や、まずは法人クレジットカードを1枚確保したいという方は申し込む価値があると思います。
オリコカード EX Gold for Biz S/M(iD×QUICPay)
オリコカードが発行するゴールドビジネスカード「エグゼクティブ ゴールドフォービズ(EX Gold for Biz)」は法人・個人事業主向けの法人クレジットカードです。
年会費が初年度無料で2年目以降も2,000円(+税)とゴールドカードの中でもランニングコストが低い法人クレジットカードです。
福利厚生サービスや急な資金調達にも対応できるキャッシング機能などのほか、MasterCardビジネスアシストまたはVisaビジネスオファーなど、MasterCardもしくはvisaの付帯サービスも受けられます。
その他、電子マネー機能やクラウド会計ソフトがお得に使えたりと価格と機能面でのバランスが非常に良い1枚。
こちらも起業したての法人や個人事業主でも審査が通りやすいことで人気の法人クレジットカードです。
JCB法人カード
JCBが発行する「JCB法人カード」は経営者や個人事業主向けのスタンダードな法人クレジットカードです。
年会費が1,250円(+税)と格安で、ネットからの申込みで初年度の年会費が無料になります。
法人カード1枚に対して、JCBが発行しているETCのみで利用できるカード「ETCスルーカードN」を無料で複数枚発行(所定の審査で枚数は変動)できるので、社員にクレジットカードを持たせたくない場合や社員が使った高速料金を一括精算できるなど事務処理の手間がカットできます。
また、事務用品・オフィス用品を扱うアスクルやタスカリマックスなどを優待価格で利用できるので、経費削減ができるなど実用性の高いサービスが受けられます。
JCBの法人カードの審査に申し込む場合は、固定電話番号を記入することが審査を通すための1つのコツです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
法人クレジットカードを持つことは経費の支払いを1本化して、様々な手数料や事務コストを大幅にカットできるという大きなメリットに繋がります。
法人クレジットカード審査の定説では「会社設立から3年以上が経過し、黒字経営がなされてる」ことが条件として良く聞かれますが、そんなことはありません。
実際に私の周りにも起業間もなく申込み、審査に通った友人もいますし、過去に信用情報に傷がつくような延滞や滞納をしていなければ、まずは審査の通りやすい法人クレジットカードを選んで申し込んで見るのも手です。
とはいえ、少しでも審査に落ちないようにするために、「固定電話を設置する」や「自社ホームページを持つ」ほか、申込書への記入は丁寧にし「提出前に間違いがないかしっかりと確認する」など、出来ることはやっておくべきです。
その上で、ご紹介したような比較的審査の通りやすい法人クレジットカードに申し込むことをおすすめします。